身勝手な想像に、愛を込めて

JUMPちゃん沼にハマった働くアラサーが知念侑李をひたすら愛でる想像ブログ。

チケット(ジャニヲタ文芸部第1回お題より)

ichigonokimi.hatenablog.jp

 

ジャニヲタ文芸部というものがありまして、今回参加させていただきたいと思ったのですが、期日(11月末日)までの記事投稿が間に合いませんでした。ただ、書いたものを載せないのも、少し淋しくなってしまったので、自己満足ですが、今更ながら投稿させていただきます。正式参加ではないので、さらっと流していただければ幸いです。完全なる想像物です。(もしこれが作品内容等そぐわない点があれば削除いたしますので、ご連絡ください。)

 

***

チケット


食べたくもないロールパンを口に詰め込んだ。

普段はミルクも砂糖も入れるはずのコーヒーを、ブラックのまま含み、そのまま一緒に流し込む。

 

「そして!今日の1位は・・・いて座のあなた!ラッキーアイテムは栄養ドリンクです!」

 

女性アナウンサーの嬉々とした声がテレビから響いた。

「いて座…」

無意識に独りごちながら「1位いて座」と暖色系の色で書かれた文字の映る画面をほんの一瞬、ぼんやりと眺め、すぐさま我に返り、リモコンの「切」ボタンを押す。ぷつと、黙り込んだテレビ画面。

…占いなんて当たるわけない。当たってたら、私は今こんな気持ちでいるはずがない。ふぅと一息つき、立ち上がった。

 

コンビニの夜勤業務をあけて、家に帰ってから睡眠時間は1時間程度。睡眠というよりは仮眠だ。

いつもなら、昼過ぎまで寝ているところだけど、今日はそうはいかない。

今朝浴びたはずの朝日を、もう一度浴びながら電車に揺られる。

カバンの中には財布と携帯、さっき駅の売店で買った栄養ドリンク。それから、万が一のことも考えて双眼鏡・・・・まあ、必要になることはないだろうけど。

電車が停まる。ぞろぞろ乗り込んでくる人。そんな中、真っ白なワンピースを着込んだ2人組の女の子が大きなカバンを抱えて入ってきた。きゃっきゃと楽しげに話している。よく見ると2人共、似たような服で、おそらく中高生だろう。そして、おそらく彼女達と私が降りる駅は同じだ。

目を瞑り、ゆっくりと息を吐いて、ポケットから取り出したイヤホンを耳にはめる。普段は聞かない曲を無意識に選んで、再生ボタンを押していた。

今はただ、現実から切り離されたかった。

 

駅を降り、改札を抜けると、先ほど見かけた2人組と同じような背格好の女の子でごった返していた。彼女達の表情は皆活き活きとしている。この日のために洋服を新調したり、髪型をセットしたりしている子もいるんだろうなと、ぼんやりと思った。

私は、ぞろぞろと流れる人並みにもまれながら、目的地へと足を進め、到着するとそのまま「グッズ売り場」と書かれたプラカードを探し、その先の続く列に並ぶ。早く来たつもりだったけれど、遅かったようだ。列はかなり長い。ここに並んでいるほとんどは、この数時間後に始まるメインイベントに胸高鳴らせ、夢をみて、わくわくしているのだろう。そして、そこには、私はいないんだ。

私なりに覚悟して、ここにやってきたつもりだったけれど、無駄だったようだ。

きゅっと唇を噛む。悔しさが募る。本当は行きたかった。だけど、神様はそれを許さなかった。どうしてだろう。彼女たちと私の差なんて、何もないはずなのに。たった1枚の紙切れだけで、こんなにも運命が変わってしまう。会いたい。ただそれだけの気持ちなのに。すぐ側にいるのに。許されない現実が、その現実を引き当ててしまった自分が許せなくて、ただただ悔しくて。感じる必要のない劣等感で押しつぶされそうになる…。

でも、欲しいものがある。ここまで来たんだから、がんばろう。自分で自分を奮い立たす気持ちでその列に並び続け、欲しかったグッズを無事に買って、そして、私は彼女たちとは反対方向へ歩いていった。

…あぁ、すごく眠い。今朝買った栄養ドリンクは何の役にも立ってないな。

とりあえず、家に帰ったら眠ろう。眠り続けよう。今日も夜から朝までバイトだ。私は、変わらぬ毎日の続きを過ごさなければならない。

 

明朝の客のいないコンビニ。

店長は奥に引っ込んで、頭を抱えながら来月のシフトを組んでいる。

私は陳列棚を整理しながら、思わず大きなあくびをした。深夜の商品の入荷受け入れは終わって、床のワックス掛けも終わった。特にこれというやるべきことはなかった。あんなに、寝たのに、まだ眠い。生活リズムが微妙に崩れたせいかなとレジ裏に戻りながら考える。

また十数時間後、あの場所はたくさんの女の子を幸せにする華やかな空間へと変貌していくのだろう。そして、私はそこには入れない。あぁ、舞踏会に行けない、置いてきぼりにされたシンデレラみたいだな…なんてふと思いつつ、同時にそんな美しいものではないなと自嘲する。


ウィーンと静けさをかき消す機械音がして、自動ドアが開く。無意識に「いらっしゃいませ」と声をかけながら、レジ前に向かう。お客さんはすぐに店の奥に歩いていったように見えた。とりあえず、レジ前に立つが、眠気のせいか、意識はどこかへいってしまっている感覚だった。

次のチャンスは来年なのかなぁ。でも、それだって行けるかどうかはわからないもんな。ぼんやりとレジ台の白色を見つめる。

 

突然、コトンと音がして、我に返ると目の前にひとつ栄養ドリンク置かれていた。


あ、やばっと心の中でつぶやき、すぐさま仕事モードの声でお客さんの顔を見る。


「いらっしゃいま…」




幸せを運ぶチケットは1枚の紙切れとは限らないのかもしれない。


end

 

 

(あとがき的な)

幸せになりたくてこんなことあればいいのになと思って書きました。読んでくれた方、ありがとうございました。